女は男に口説かせる

男が主体的に女を口説くものだ。

もし、本当にそう思っている方がいたら、それは間違いだと教えてあげよう。

正しくは男が主体的に女を口説くように仕向けられているのである。

心理学者のヒューイットとウォルシュとは、その隠れた真実を証明するために、つぎのようなシンプルな心理実験をおこなっている。

バーのカウンターに美女を一人で座らせて、入店してくる男性客たちに向かって、いくつかの意味深な態度をとらせる。

①ソッポを向く

②軽く視線をあわせる

③何度か視線をあわせる

④視線があったときに、微笑を浮かべる

である。

その結果、美女の誘惑度が増すごとに、初対面の男性客が誘いの言葉をかけてくる確率が段階的にアップしていくことがわかった。

これは、当たり前のようでいて、それほど当たり前の結果ではない。

この場合、ふつうに予想されるのは、たった一人でカウンターにいる美女を、男たちが放っておくはずがないということだろう。

ところが、実験では、男たちは、美女のほうから、なんらかのサインが送られないかぎり、自分からアプローチすることはない、ということがわかったのだから。

女性は、この結果をどう読みとるのが正解だろうか?


答えは、マトモな社会人を自任する男は、ズボンの下に攻撃的な性欲を隠しているとはいえ、だれもが、表向きは紳士でありたいと思っている、ということである。


たとえ美女が一人でいようと、見ず知らずの他人に、気安くアプローチしないくらいの抑制力はあるのだ。

男は、みんなオオカミ、と女性はいう。

そのとおりだ。

だが、みずからオオカミに食べられるヒツジになるつもりがなければ、恋は生まれない。

あの女性が食べたいという願望と、恋の炎は、まったく同じものだと思ってほしい。

そして、紳士を気どった男たちをウルフマンに変身させるには、どうしても女性のリードが必要なのだ。

それでは、視線と微笑によって招き寄せた男を完全にゲットするには、どうしたらいいのか? そこから先は、ちょっと高度な駆け引きが必要になる。


たとえば、あるスナックのママは、お互いに憎からず思っている客のために、あるとき、早めに閉店して、二人きりになるという特上のサービスをおこなった。

美人女将や美人ママが、自分と二人きりになるために、ノレンを早めに片づけてくれるのは、まさに、男冥利につきるというものだろう。


その男性客は、それまでは好感のもてる紳士を気どっていたものの、そこでは本性をあらわした。

が、二人きりで酒を飲み交わす店内で、男が口説きのラッシュをかけるや、ママはポツリとこういった。

「今日は、ダメよ」


男は、シューッとしぼんでしまった。

やはり甘くはなかったかとうなだれる男に、ママは、「あたしと寝たい?」とズバリ聞いた。
うっすらと微笑んだ顔に、妖しい誘惑がある。

男は、ふたたび元気をとりもどして、ウンウンとうなずいた。
「いつなら、いいの?」と、おそるおそる聞いてみると、「お店をやっていると、なかなか自由がきかないのよ」 〈なんだ、けっきょく、ダメなんじゃないか … …〉。


そこで、ママが、こうひと言。


 「でも、そのうち、一日くらいの暇はつくれるはずだから」

男は、心のなかで万歳と叫んでいたはずだ。

かくして、たんにママと寝たいと思っていただけの男は、この瞬間に、ママにゾッコンになり、以後、連日連夜、この店に通う上客になったのである。


このように、期待感を上げたり下げたりした後、最後にピュッと上げることで、男は、その女性にますますホレこんでしまう。
みごとな手練といわざるをえない。

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